我々は変化の最先端で勝負することを誓います

”裸足の美学からの脱却”

ダントツの舞台裏
プロモーション代表 菅原泰男コラム

3) あなたの会社は“超一流”に弁当や定食を作らせていませんか?

超一流シェフ(I型)と一流シェフ(II型)の
料理の作り方の違い

前回、ダントツの生産性を生み出す超一流のI型と、裸足の美学を追求する一流のII型の違いについて説明しました。I型がリーダーシップを取るチームは学習し、自家発電するチームとなり進化を続け、II型がボスマネジメントをする裸足のチームは延々と体を鍛えることに終始してしまう、と指摘しました。

しかし、実際は、どの企業にも4つのタイプが混在し、どこから手をつけてよいのか頭を悩ませているのが実情です。

さて、今回は、限られた人材の中で最高のパフォーマンスを生み出す人財マネジメントの手法を紹介します。

「自分の会社にはそんな優秀な人財などいない」と思う人もいるかもしれません。しかし、実はそう思い込んでいるだけで、そうした人財がいるのに気付いてなかったり、生かし切れていなかったりして、結局、辞めさせてしまっているのかも知れません。できない理由を並べる前に、まずは自分のマネジメントをしっかりレビューしてください。きっと良いヒントが見つかるはずです。

今回紹介する人財マネジメントの本質を理解するために、まず超一流シェフ(I型)と一流シェフ(II型)の料理の作り方の違いを説明します。ここでは、お客様がそれぞれに対しどのような評価をするのかが、大事なポイントとなります。自分もお客になったつもりで、想像してみてください。

「一流シェフ(II型)の料理の作り方」=II型のビジネススタイル

STEP1 定番メニューから料理を決めて、素材を選ぶ

彼らはまず、自分の得意とする定番メニューの中から料理を選び、レシピを思い浮かべて食材を探します。

STEP2 基本に忠実に料理を作る

メニューが決まると、料理長や先輩、学校の先生などに習った基本通りに、食材を揃え、切り方や鍋に入れる順番、火加減、味つけなど、すべてにおいて忠実に再現しようとします。

STEP3 常にレシピを意識し、さらに磨きをかける

習った料理の完成度を高めていくため、常に自分のレシピをブラッシュアップさせ、次回はもっとうまくできるように努力します。

FINISH 間違いのない、追求された味

いつ食べても常に間違いのない、おいしい料理が出来上がります。ただし、毎日食べるとお客様もさすがに飽きてしまいます。

「一流シェフ(II型)の料理の作り方」=II型のビジネススタイル

「超一流シェフ(I型)の料理の作り方」=I型のビジネススタイル

STEP1 お客様や旬の素材を見て、その時のメニューを考案する

食べてもらう人の好みや体調、またその時期の旬の素材から、そこでひらめいたオリジナルメニューを発想します。

STEP2 自分の感性で料理を作る

食べる人が喜んでくれる旬の素材を生かす料理を、自分の感性を大切にして作ります。当然ですが、基本的知識や技術は身につけています。

STEP3 どうやって作ったか細かく覚えていない

再度来店したお客様が「前回の料理がとてもおいしかったので、もう一度作ってくれないか」と頼んでも、本人はどうやって作ったのか詳細に覚えていません。

FINISH 感動深い独創的な味

彼の作る料理は独創的で、お客様にいつも新鮮な驚きや感動を与えます。毎日でも、彼の料理を食べに行きたくなります。

「超一流シェフ(I型)の料理の作り方」=I型のビジネススタイル

超一流シェフと一流シェフの違いをまとめると、以下のようになります。

超一流シェフと一流シェフの違い

I型の超一流シェフは創造力、II型の一流シェフは再現力に長けていることが理解いただけると思います。この違いを頭に思い浮かべながら、いよいよマネジメントの本質に入りましょう。

超一流と一流の差は、ビジネス環境の違いでさらに顕著になる

前回は、リーダーが超一流のI型か、それとも一流のII型かの違いで、チームとしての生産性に大きな差が生じるという話をしました。この超一流と一流の差は、企業やトップが彼らに与えるビジネス環境の違いで、さらに顕著に表れてきます。

下のグラフは、超一流(I型)と一流(II型)のパフォーマンスの差を示したものです。

X軸に料理の価格、Y軸に料理の評価と定義し、両者を比較してみました。価格の低い弁当や定食では、両者の差はあまり表面化しませんが、価格の上昇とともにその差はどんどん開き始め、おまかせコースでは、雲泥の差がついてしまいます。

超一流(I型)と一流(II型)のパフォーマンス

なぜ、弁当や定食を作る時点ではごくわずかだった評価の差が「おまかせコース」のレベルになると、とてつもなく大きな差になってしまうのでしょうか。以下で述べる解説を読む前に、少し時間をおいてこのグラフが言わんとしていることを、考えてみてください。

自由度が増すほど超一流は能力を発揮する

料理の価格が上がるに従って、超一流と一流の評価の差が開いていく理由は、お客様の料理人への期待の度合いと、実際作れる料理に対しての自由度が増すからです。

低価格帯の弁当や定食ゾーンでは、メニューや使える素材が大きく制限されており、I型本来の実力が出せずII型との差もあまり表われません。I型は枠にはめられ、自由を奪われると、自分の能力を存分に出し切れないタイプなのです。ましてや同じことを繰り返しやらせてしまうと、テンションを下げてパフォーマンスを落とすことすらあります。

しかし、「おまかせコース」のように、メニューに何の制限もなく、十分な予算が与えられれば、大いに創造力を発揮し、驚くほどのパフォーマンスを生み出すのがI型です。それは結果としてお客様に期待以上の感動を与えるオリジナルな料理となります。

一方でII型は、たとえ自由に料理を作っていいと言われても、基本レシピの延長線でしか料理が思い浮かびません。結果として、おいしいけれどもお客様に感動や満足を与えるまでは及ばないのです。

超一流の人材はどのようにマネジメントすればいいか?

実はどんな企業にもI型の素養を持った人財はいるものです。もし思い浮かぶ人財がいたら、以下の4つのポイントに従って、うまくマネジメントしてみてください。結果が出るまで少し時間はかかりますが、じっと我慢して待っていれば、必ず想像以上の成果が生まれます。

ポイント1 ほかのシェフと同じ扱いをしてはダメ

金太郎飴のような画一的なマネジメントやオペレーションをしない

ポイント2 メニューを制限してはダメ

扱うプロダクト、サービス、技術などを限定しない

ポイント3 値段を制限してはダメ

担当するマーケットやクライアント、相手などを限定しない

ポイント4 作り方を制限してはダメ

仕事のやり方や手順を限定しない

以上、I型人財に4つのポイントを実行できれば、斬新・革新的なビジネスモデルが生まれてくる可能性があります。

超一流のシェフに自由に料理を作らせることは、個人のパフォーマンスが上がるだけにとどまりません。I型人財の暗黙知をしっかり棚卸しして、形式知化し、組織に水平展開することで、企業は予想以上の生産性を生み出す可能性が充分あるのです。

ここまでの話の理解度からのアドバイス

さて、以下のマトリックスを見てください。縦軸にここまでの話の理解度を、横軸に実践度を定義し、4つのタイプに分類しました。自分がどのタイプにあてはまるか考えてみてください。

マトリックス

それぞれのタイプごとに、今後、どのように仕事に取り組むべきかについて、私からアドバイスを述べます。

I型 しっかり理解し、実践しようとするタイプ

あなたは、希少な人財です。現在、異端児扱いされていようが、社内評価がいまいちだろうが、気にせず、自分を信じて何事にもチャレンジしてください。

II型 納得はしていないが、やってみようとするタイプ

話の中には、理解できない、もしくは受け入れがたい部分が多いかもしれませんが、騙されたと思って実践してください。今のうちに、自己否定、過去否定ができなければ、決して自己変革できません。

III型 頭で理解し、できたつもりになっているタイプ

とにかくやってみないことには始まりません。どんなことでも、まずは実践することです。

IV型 諦めているタイプ

すべて他人に責任を転嫁し、不平不満を言うだけでは何も変わりません。このままでは危険領域に突入してしまいます。早く目を覚ましてください。

次回は、タイプ別の上司、部下の組み合わせについて紹介します。相性のよい関係や悪い関係、不思議な関係、共倒れの関係など、組織の中に様々なパターンが出てきます。現場で起きている組織の問題点の原因がクリアになり、きっとスッキリするはずです。