我々は変化の最先端で勝負することを誓います

”裸足の美学からの脱却”

ダントツの舞台裏
プロモーション代表 菅原泰男コラム

4) あなたの会社で、金の卵を踏みつぶしているのは誰ですか?

会社の中の金の卵をしっかり孵化させ、金の鳥に育てるのも、足で踏みつぶしてダメにしてしまうのもマネジメント次第

会社の中の金の卵をしっかり孵化させ、金の鳥に育てるのも、足で踏みつぶしてダメにしてしまうのもマネジメント次第です。今回は、組織パフォーマンスを向上させるために最も大切となる上司と部下の関係の基本原則を、これまで繰り返し説明してきた人財マトリックスを使って解説します。

弊社ではこの考えに基づいた組織コンサルティングの結果、数多くの企業でパフォーマンスの向上を実現させています。

例えば、部門長を変更して、半年で30%、年間50%売り上げアップした例や、新規プロジェクトリーダーに若手を抜擢し、会社の第2の収益ビジネスに成長させた例があります。さらに、赤字企業やM&Aした企業のマネジメントを全体的に見直したところ、業績がV字回復した会社もあります。

以上はほんの一例ですが、企業は教育やOJT(職場内訓練)より、マネジメントで組織パフォーマンスが向上するケースが多いのです。

それではまず、このマネジメントの基本原則を理解するために、各タイプの根本に流れている意識ベースの説明をしておきます。

まず、この意識ベースをしっかり把握してください。

本音A IV型はII型を意識→最もよくある典型的他責パターン

IV型は同じ全力疾走タイプのII型を意識します。「一生懸命やっているのに、あの人は結果が出て、なぜ俺は結果が出ないんだ?」と思っています。

このタイプの人に「なぜ、結果が出ないんですか?」と理由を聞いてみると、「自分が担当しているマーケットや顧客、また自社の商品やサービスが悪いからだ」と、すべて他人の責任にするようなことばかりを言います。残念ながらこのままでは、いくら頑張っても結果は変わりません。

本音B III型はI型を意識→お気楽な自己過信パターン

III型は全力疾走タイプのII型やIV型を見下しているため、一見、自分と似た最短距離思考のI型を意識します。I型のなんとしてでも結果を出す凄さを見て、自分にはそこまではできないことを薄々自覚していますが、「本気を出せば、俺だってできる」と自己過信しています。もちろん、実際に自分が行動する気にはなかなかなりませんし、本気になったとしても、長続きしないのが特徴です。

本音C II型はI型を意識→企業が注目しなければいけない重要パターン

II型は結果を出すI型に対し、人前では無関心を装っていますが、心の底ではかなり意識しています。「あいつはいつも楽をしているのに、なぜ結果を出しているんだろう? でも理由を本人には聞きたくない」といった、嫉妬心とライバル心を持っています。

I型が上司や先輩ならまだいいのですが、部下や後輩となると、プライドが邪魔をして、さらにこの傾向が顕著になります。II型からI型へ変わることが大変難しいのは、自分自身の中に、I型との間に厚い壁を作っているからです。

企業は、高度成長の時代から、「裸足の美学」を良しとしてボスマネジメントを続けてきたため、本物のビジネスリーダーが育成されてきませんでした。その結果、日本の変革は遅れてしまいました。その最大の原因が、このII型→I型への壁です。II型がI型へと変われるかどうかは、まず自分が作ってしまっている厚い壁を認識し、そのうえで自己否定・過去否定して、自分の持つ成功体験や思考の枠を打ち破れるかどうかにかかっています。

本音D I型はI型を意識→新しいことが生まれやすい価値創造パターン

I型は社内外の同じI型を意識します。もともと希少な存在のため、部門やプロジェクト、また会社を超えてでもI型にコンタクトします。また、オーナーやトップの懐に入るのも上手です。その結果、様々な分野での人脈を構築し、ビジネスチャンスを生み出します。

この基本的心理をベースに、各タイプが上司と部下となった場合の関係を見ていきましょう。各タイプの説明は、第1回を参照してください。

パターン1 相性の良い関係 → 上司=I型 部下=II型

上司である最短距離思考のI型がビジネスを創造し、部下のII型がマーケットや顧客を獲得してきます。まさに理想の関係です。組織の中でトップとNo.2の関係がこの組み合わせになっている部門やプロジェクトは、高いパフォーマンスが期待できます。

パターン2 相性の良くない関係 → 上司=II型 部下=I型

「裸足の美学」を貫くII型の上司は、自分のやり方を部下に押しつけます。このため、自由に伸び伸びやりたいI型の部下は、手足を縛られたように感じ、特有の爆発力を発揮できず、パフォーマンスをかなり低下させてしまいます。まさに宝の持ち腐れ。なるべく避けたい組み合わせです。

パターン3 不思議な関係 → 上司=III型 部下=I型

I型にとっては自分を縛るII型の上司より、何もしないIII型の上司の方が楽です。III型の上司は成果を上げていれば、あまり積極的に仕事に関与してこないので、I型の部下は比較的自由に動け、意外と相性が悪くない関係となります。プライベートでゴルフやマージャンなどを一緒にできる仲になると、この関係はうまくいくことがあります。

パターン4 相性が最悪な関係 → 上司=IV型 部下=I型

“ビジネス音痴”のIV型上司は間違った指示を出し続け、I型部下のパフォーマンスを悪化させます。ビジネスにおいてI型は、IV型のやり方を生理的にいやがるため、間違いなくモチベーションを下げます。長い間この関係が続くと、I型は会社を辞めてしまうこともあります。“金の卵を足でつぶす”この関係は、企業が絶対避けなければいけないものです。

パターン5 共倒れの関係 → 上司=II型 部下=IV型

自分がメンバーの一員でいた時はそれなりの成績を残していたのに、マネジャーになった途端、ダメになってしまう、「名選手、名監督にあらず」がこの組み合わせです。II型の上司は、出来の悪いIV型を部下に持つと、熱心に指導することにばかり夢中になってしまい、チーム全体のパフォーマンスはどんどん落ちていくという、典型的泥沼パターンです。気をつけないと、だんだん深みに入って、マネジャー本人まで自信をなくしてしまいます。

パターン6 犬猿の関係 → 上司=III型 部下=II型

「裸足の美学」のII型は、口ばかりで、足の動かないIII型上司を最も嫌います。「いつも理想ばかり言って、現場を知らない」「いつも早く帰宅して、有給ばっかり取る。大事な時に使えない」と全く反りが合いません。お互いストレスがたまる一方の関係です。

以上のこの6パターンが企業でよく見られるケースです。これらのパターンを基にして、戦略的に組織の組み替えや配置配属を考えると、必ず良い結果が得られると思います。限られた人財リソースの活用にお役立てください。

超一流のI型人財へステップアップする「N型オペレーション法」

上司と部下の組み合わせは理解したが、そもそも会社に人財がいない、と悩んでいる人には、以下で各タイプ別のステップアップ方法を紹介します。超一流のI型人財を目指し、具体的にどのように各タイプをステップアップさせるのかを「N字オペレーション法」を使って解説します。

N字オペレーション法とは、IV型→III型→II型→I型の順にN字にステップアップをさせることから名づけました。

IV型→III型

常に全力疾走するが、ビジネス音痴のため、社内外に迷惑をかけてしまうIV型に対しては、

Step1 いったん足を止めさせること。バットや包丁を持っていれば(第1回参照)、強制的に取り上げる。

Step2 なぜいつも結果が出せないのか、自分の行動のムダに気づかせる。

ポイント IV型は足を止めると、自分の存在意義がなくなるのでは、用なしになるのではと思い込んでいます。しかし、そのまま走り続けていても結果が出ないので、一端立ち止まって考える時間を与え、III型のポジションに置きます。

III型→II型

能書はたれるが、足が動かず、期待外れで結果の伴わないIII型に対しては、

Step1 強制的に現場に連れ出し、有言実行させる。

Step2 頭で考えているほど、現場ではうまくいかないこと、世の中は甘くないことを実践の場で体感させる。

ポイント III型は実践を積み重ねることで、結果が少しずつ出始め、II型のポジションに移行します。しかし、目を離したりムチを打ったりするのをやめると、すぐに足が止まって元に戻ってしまうので、習慣化するまで徹底してやらせることです。

II型→I型

過去の成功体験からなかなか自己変革できないII型に対しては、

Step1 裸足の美学の限界に気づかせ、自己否定、過去否定する勇気を持たせる。

Step2 武装することの本当の強さを認識させ、「シナリオの美学」を身につけたいとマインドセットさせる。

ポイント II型の世間体を気にしたつまらないプライドを捨てさせ、役職や年齢・性別などに関係なく、I型の人には率直な気持ちで接し、まず思考・行動パターンを吸収し、真似してみることから始めさせます。

そこで自分との違いを納得させたうえで、常にシナリオ→アクション→レビューのビジネスサイクルを回させることで、I型に近づけます。日々のレビューがポイントです。

注意したいのは、過去の自分のビジネススタイルから現在の自分に対して迷いが生じ、動けなくなってしまうと、途端にIII型になってしまい、パフォーマンスを大きく落とすことがあることです。自己変革の時も常にアウトプットを出す意識を持ち続けることを心がけてください。

これからは超一流への変革人財創出が大事

これまで日本企業の多くは、II型を中心に、マネジメントを続けてきました。特に教育では、社外の講師やコンサルタントを入れ、いかにIV型をII型にするかばかりに時間とお金を使ってきましたが、この手法は限界を迎えています。

私はこのやり方に警鐘を鳴らし、これからはII型→I型への変革人財創出がいかに大事かを提唱してきました。

さて、次回からは、実践に基づいた超一流に近づくための「ビジネスサイクル」について紹介します。